【第6回】
ベトナム人患者の傾向

公開日: 2016年12月5日月曜日




新宿区外国人登録者数第3位のベトナム人


 今回は、新宿区における外国人登録者数において、中国、韓国に次いで多いベトナムの患者さんについてお話をしたいと思います。

 新宿区における住民基本台帳の外国人住民国籍別登録において、ベトナムは3位となっており、その数は3,435人(平成28年10月1日現在)となっています。

 ベトナムは今年の9月から小学校で習う第一外国語に英語と並んで日本語が選択され、日本語を学ぶ人が増えています
 大使館によると、ベトナム全体で日本語を学ぶ人は約4万6千人といわれていて、対日感情は概して良好です。
 これは日本のベトナムへの投資額が韓国、マレーシアに次いで3位であるからかもしれません。

 当医院におけるベトナム人患者さんは、働いている人よりも留学生が多いです。多くは卒業後に母国へ帰る人が多いのですが、日本に残って仕事をする人も以前よりは増えてきているように感じます。

 ベトナム人患者さんは、中国や韓国の患者さんと比べると日本語が通じる場合が多く、あまりコミュニケーションには困りません。
 その一方で英語を話せる人が少ないので、英語でのコミュニケーションはむしろ期待が出来ないことが多いです。ただし、在住者よりも一時滞在の旅行で来るベトナム人の方が英語を話せる人が多い感じはします。

 ベトナム人患者の健康保険は、留学生や個人商店に勤める人が多いので、ほとんどが国民健康保険です。


当医院におけるベトナム人患者の特徴その1:歯科受診の経験が少ない


 当医院におけるベトナム人患者さんについて、簡単に以下に所感を述べたいと思います。

 第一に、当医院に来院するベトナム人患者さんについて感じるのは、口腔内に充填物や補綴物等のカリエス処置が施されている人が少ない点です。
 歯列が生活歯のみであることが他の外国人患者よりも多く、来院する主訴は除痛なのですが、大抵はカリエス由来よりも智歯周囲炎やP急発であることが多いです。
 
 また、今まで母国で歯科医院を受診したことがないという人も多く、治療の経験がほとんどないので、治療の流れを説明して理解してもらうのに時間と手間が必要です。

 プラークや歯石の違い、ブラッシングとスケーリングの目的、充填物と補綴物の違い、これらに対しての知識がほとんどないので、口頭で説明してもまず理解を得ることは困難です。

 このような場合の対処としては、百聞は一見に如かずということで、イラストや写真を見せながら説明をするのが適切と思います。


当院におけるベトナム人患者さんの特徴その2:温和だからこそ注意が必要


 第二に、当医院に来院するベトナム患者について感じるのは、温和な性格の方が多い事です。韓国や中国の患者と比べると、自己主張や意思表示が強くありません。
 そのため、治療方針については「先生にお任せします」という患者が他の外国人患者よりも多いです。

 ここで注意しなければならないのは、カリエス処置を受けたことがない患者が多いので、メタルの充填物や補綴物は想像の範囲外である患者がほとんどであることです。

 ゆえにカリエス処置を行う場合、健康保険内の処置ではメタルの充填物や補綴物を装着するケースがあることを事前に説明をしておかないと、治療後に落胆(がっかり)する方が多いです(ちなみに中国や韓国の患者の場合はクレームを言う場合が多い)。
 しかし、きちんと説明をして理解を得れば納得する患者も多く、トラブルに繋がることは少ないと言えます。

* * *

 ベトナム人は日本に対して尊敬と感謝を持っている人が多いといわれています。
 そして日本に来るベトナム人は年々増えています。
 もしみなさんの医院にベトナム人患者さんが来院した時には、これらのことを念頭に置いて対応すると良いかもしれません。


今回でこの連載が終了です。
皆さんの臨床の参考になれば幸いです。
半年間、どうもありがとうございました。


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